社長と学ぶ人間学 その24

人間学を共に学ぶ皆さんへ

三月に入って暖かな日と寒い日が交互に続き、なかなか暖かな日も長続きはしませんが、梅の花も咲き始めて春は着実に近づいてきました。
これを三寒四温と言いますが、やはり昔からの天候や季節に関する言い伝えは正確ですね。
このような智恵はしっかりと受け継いで日本人ならではの豊かな情緒をしっかりと育みたいものです。
さて、今回の論語は「温良恭謙譲」という言葉を学びます。
詳しくは後程に述べますが、私達の祖先が中国から伝わった論語から学び、育んできた温良恭謙譲の精神こそが日本人らしい譲る心を持ち、他人との争いを避ける心優しく懸命な民族性の原点です。
この素晴らしい温良恭謙譲の精神を次世代へと正しく引き継ぎことが、私達大人の大きな責任であると思います。

子禽(しきん)、子貢(しこう)に問いて曰く、『夫子(ふうし)の是(こ)の邦(くに)に至るや必ずその政(まつりごと)を聞けり。

これを求めたるか、そもそもこれを与えたるか。』

子貢曰く、『夫子(ふうし)は温良恭倹譲(おんりょうきょうけんじょう)以ってこれを得たり。夫子の求むるや、其諸(それ)人の求むるに異なるか。』

和訳

子禽が子貢に尋ねた。
『孔先生は、どこの国に行かれても、必ず政治について意見を聞かれるが、これは孔先生から求められたものか、それとも先方(君主)からもちかけられたものでしょうか?』

子貢はこれに対して、
『孔先生はお人柄が穏(おだ)やかで素直、恭(うやうや)しくして行いにしまりがあり、それに謙虚で人に譲るところがあるので、先方から求められたのである。従って、先生が求められるのは、他の人の求め方とは大いに違うと思うよ』

解説

子貢(しこう)は最も優れた孔子の弟子の一人です。
子禽(しきん)は孔子の弟子ですが、子貢の弟子とも言われています。
孔子が生きていた2500年前の中国では、国の君主に仕官として取り立てて貰うために、自分が勉強をした学識を誇らしく強引に話していました。
しかし、孔子という人は、決して自分から売り込むようなことはしませんでした。
反対に孔子の温良恭謙譲という人柄を多くの人々は知っていたので、君主の方から意見を求めてきたのです。

この文章は、孔子の慎(つつ)ましく、へりくだる謙譲(けんじょう)の美徳を強調した文章です。
現代においても、自分の才能をしっかりとアピールして、それによって自分の地位や待遇を向上させる、どちらかというと西欧的な考え方の日本人が多くなってきました
しかし、日本人の根本的な道徳思想として、自己顕示欲を戒めて傲慢不遜(ごうまんふそん)を抑制する「謙譲の精神」が高く評価されています。
しかし、この自分を低く見せる謙譲の精神は、西欧の価値観では「卑屈・柔弱・自信の無さ・リーダーシップの欠如・自己嫌悪・へつらい」というように悪い方向で解釈されることが多く異文化交流の障壁ともなっているのが残念です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

感謝合掌 山内恭輔

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次